ー河内長野市が打ち出した「公務員兼業推進」という転換点
複業の制限が当たり前だった公務員の世界に、変化の波が訪れています。
なかでも注目されているのが、大阪府・河内長野市の取り組みです。
河内長野市は2025年、「河内長野市職員兼業推進条例」(以下、兼業推進条例)を制定し、地方公務員である市役所職員の社会貢献型副業を制度として後押ししています。
条例の詳細は(こちら)
この条例は、従来の「原則禁止・例外許可」という発想から一歩踏み込み、市役所職員の兼業を制度として“後押しする”ことを明確に打ち出している点に特徴があります。
本記事では、特定非営利活動法人 越境先生(以下、越境先生)による調査をもとに、この条例の意義と影響範囲、そして教員複業との関係性について整理しています。
河内長野市の教員は、複業しやすくなるのか?──条例適用の範囲とポイント
地方公務員の兼業は、地方公務員法第38条を根拠に、
・公務能率の確保
・職務の公正性
・職員の品位保持
といった観点から、慎重に判断されています。
多くの自治体では現在も「申請があれば個別に判断する」という運用にとどまっていることが多いです。
そのなかで河内長野市の条例が注目されるのは「市役所職員の兼業を、市として積極的に位置づけ直した」点にあります。
条例の目的として掲げられているのは、主に次の3点です。
- 地域貢献と市民サービスの充実:兼業を通じて地域活動に貢献し、市民サービスを高める。
- 経験の職務への還元:兼業で得た知見を本来業務に生かし、行政の質を向上させる。
- 職員のウェルビーイング向上:多様な働き方を推進し、職員の幸福度と意欲を高める。

河内長野市HPより:河内長野市職員兼業推進条例を制定しました
単なる規制緩和ではなく、「兼業を公共的価値の創出につなげる」という思想が制度の根底にあることが読み取れます。
では、教員の複業については、適用範囲内なのでしょうか
教員の複業については、条例の趣旨を踏まえ「個別判断」で対応。他市と比べて、教員だけが特段に複業しやすくなった、という事実は確認できない
本条例は、公務員法第38条を基盤としており、原則として市で採用された一般行政職員などが対象です。
しかし、教員の兼業判断は、地方公務員法第38条に加えて「教育公務員特例法第17条」の適用を受けます。
この教員特有の法適用を踏まえ、越境先生では、「河内長野市の教員は“職員兼業条例”の対象になるのか」という観点で質問を行いました。回答は以下の通りです。
・今回の職員兼業推進条例は、基本的に市役所などに勤務する行政職員の兼業に関する法律(地方公務員法第38条)を前提に設計されている
・教員の兼業申請については、これまで通り個々のケースごとに諾否を判断する(河内長野市 担当者からの回答より一部引用)
したがって、この条例によって、市役所職員と同じように、教員の複業が特別に“後押しされる”状況が生まれたわけではない、と捉えられます。
それでも「追い風」と感じられる理由ー河内長野市の挑戦が示唆する「教員複業時代」の展望
・教員の複業が、制度上明確に後押しされているわけではないこと
・判断権限が教育委員会に委ねられている構造は変わっていないこと
これらの点を踏まえると、「すぐに教員の複業が広がる」と語ることはできません。
一方で、この条例を「教員複業と無関係な制度」と切り捨ててしまうのも、やや短絡的と感じます。
越境先生としては、今回の河内長野市の動きを、広義では「追い風」と受け止めています。
今回の取り組みが示しているのは、
「兼業は、原則的に抑制すべきもの」
という行政内部の価値観が揺らぎ始めているという機運です。
行政職員において「公益性があり、公務に支障がなければ、社会との越境を積極的に評価する」という考え方が制度化されたことは、中長期的に見れば、教員を含む公務員全体の働き方の議論に影響を与える可能性があると考えます。
越境先生では、河内長野市の取り組みや、他都市の追従がうねりとなり「越境する教員」の本格的な登場を後押しするきっかけとなることを願ってやみません。
「学校と社会との見えない壁を越える先生」を増やしたい——そのために
特定非営利活動法人 越境先生では、教員の複業を仕組みとして後押しすることをミッションとして活動しています。
「学校の外の経験が、教育に還元される」
そんな当たり前を、現場でも社会でも広げていくために、私たちは活動を続けています。
この取り組みに共感いただけたら…
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