京大卒の元営業マンが教育を変える!「越境する先生」のキャリア論

「いい大学を出て、いい会社に入れば幸せになれる」

多くの人が一度は耳にする、お決まりのキャリアパス。しかし、このレールを歩みながら、たった半年で挫折を経験した人物がいます。香川県高松市にある大手前高松中学・高等学校の教員、合田意(ごうだ・のぞみ)氏です。

彼は、自身の苦い経験を子どもたちに繰り返させないため、そして教育現場をアップデートするために、自ら学校という枠を超え、越境学習に挑んでいます。

この記事では、合田氏がなぜ「越境」という道を選んだのか、その活動が教育現場にどのような変化をもたらすのかを掘り下げていきます。

合田 意(ごうだ・のぞみ)さん プロフィール

大手前高松中学・高校教諭、広報部長、新コース準備推進室共同室長。1984年香川県生まれ。京都大学工学部卒業、京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、一般企業に就職し、半年で辞めるという挫折を経験。その後2年で教員免許を取得し、現職に至る。理科(物理)、数学、情報を担当。ICT担当などを経て、2024年度からは広報部長。自身の挫折経験を元に、キャリア教育、探究学習を中心とした教育活動を展開。ロイロ認定ティーチャー、ロイロ認定イノベーター、BizWorld認定フェローなど。

京大卒なのに就活で失敗?挫折から見えたキャリア教育の必要性

合田氏は京都大学を卒業後、新卒でマンションの営業マンになります。しかし、そのキャリアは半年で終わりを告げました。

「理系だったので、問題を解決する『ソルブ』は得意だったんです。でも、営業で人を盛り上げたり、気持ちよくおしゃべりしたりするのがすごく苦手で…」

この挫折の根底にあったのは、自己分析の欠如でした。

「いい大学に行けばいい就職先が見つかる」という考えで安易に就職活動をしてしまった結果、自分の適性とは全く違う環境に身を置くことになったのです。

この苦い経験は、合田氏の教育者としての原点となりました。

彼は、「自分ができなかったこと」を子どもたちには体験してほしいと強く願うようになります。

アントレプレナーシップは生徒だけじゃない!先生も実践すべき

合田氏は教員として、生徒たちに「探究」「アントレプレナーシップ(起業家精神)」「キャリア教育」の重要性を説いています。

特に、将来のキャリアを深く考えさせるには、学校の外に出て社会との接点を増やすことが不可欠だと考えています。

そして彼は、このアントレプレナーシップを「生徒に求めるなら、自分も実践すべき」と考えました。

この思いから、2025年4月に「一般社団法人To Be」を設立。学校に探究教材を提供する傍ら、地域の企業と生徒を結びつけるプロジェクトを立ち上げました。

企業が提示した課題に生徒が取り組み、企業は協賛金という形で費用を支払う、まさに「三方よし」の仕組みです。

また、この経験は、合田氏自身の教員としてのスキルアップに直結していると言います。

「例えば、地域の会計事務所が運営するデジタルコンサル会社の生成AI研修を教員向けに取り入れたり、企業のSDGs勉強会に参加したりするなど、外部とのつながりから得た知見やリソースを、積極的に学校教育に取り入れています。

中に閉じこもっていると、できることはできるけど、苦手なことは苦手なまま。あるいは、苦手なことを助けてくれる人や頼れる人を一生知らないままになってしまいますよね

合田氏は、外部で得たネットワークや知識が、結果的に子どもたちの学びの選択肢を広げ、教育の質を高めることにつながると話します。

「越境」を後押しする学校の柔軟な文化

合田氏の活動は、彼の熱意だけで成り立っているわけではありません。彼が勤務する学校の柔軟なスタンスが、越境を可能にする重要な要素となっています。

この学校には、民間企業出身の管理職の先生がいるため、外部活動への理解が深いのが特徴です。

合田氏が法人を立ち上げる際も、「いいじゃん、やってみなよ」と快く背中を押してくれました。

短期的な成果にこだわらず、教員の学びを「健全な赤字」として捉えるこの学校の文化は、教員が臆することなく新しいチャレンジができる土壌を育んでいます。

学校の建学の精神である「指導的社会人の育成」を実現するためには、「社会とつながっていなければ、社会のリーダーは育たない」という考えが根底にあるのです。

副業・複業は新しい先生のキャリアパス

合田氏にとって、この活動は金銭的な報酬よりも、教育者としての「経験報酬」に価値があると言います。

外部に出て、教育分野以外の多様な人々とつながり、新しい知見やリソースを子どもたちに還元する。この「越境」という道は、停滞しがちな教育現場に風穴を開け、先生一人ひとりの「エージェンシー(主体性や行動力)」を育み、新しい未来を描くことにつながります。

合田氏の挑戦は、公立・私立を問わず、目の前の授業や学級運営に忙殺されがちな先生方に、新たなキャリアの可能性を示しているのです。

「学校と社会との見えない壁を越える先生」を増やしたい——そのために

特定非営利活動法人 越境先生では、複業や兼業だけでなく、広く「越境」によって生まれた好事例を一つでも多く可視化し、仕組みとして後押しすることをミッションとして活動しています。

「学校の外の経験が、教育に還元される」

そんな当たり前を、現場でも社会でも広げていくために、私たちは活動を続けています。

この取り組みに共感いただけたら…

越境先生では、こうした取り組みを支えてくださる寄付パートナーを募集しています。

月1,000円から、教育の未来を変えるチャレンジに参加いただけます。

先生が変われば、学校が変わる。学校が変われば、社会が変わる。

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