「養蜂自体は、プロジェクトの目的ではない」教科の垣根を超えた探究が生徒の未来に効く理由

ー生徒の将来の興味は誰にもわからない。

だからこそ、このプロジェクトは「養蜂そのもの」が目的ではないんです。

そう語ってくれたのは、学校の屋上でミツバチを飼う「養蜂プロジェクト」の発起人 平賀先生。

「面白そうだから、やってみなよ」と学校から背中を押されて始めた探究プロジェクトは、ミツバチの生態を学ぶだけでなく、

  • 花の開花時期を調べてデータを集める
  • 採蜜した蜂蜜を瓶詰めし、ラベルをデザインし、値段を決めて販売する
  • 文化祭で140瓶のハチミツを完売し、次年度の改善点を議論する

までに広がり、プロジェクトに参画した生徒たちは「社会」とつながる経験を重ねていきます。

また、そのユニークな活動の裏側には、羽田国際高等学校の「自由な活動を柔軟に支援する風土」、そして先生たちの素朴で純粋な探究心がありました。

平賀友大さん プロフィール

羽田国際中学・高等学校教諭、理科。東京都品川区生まれ。高校卒業後に2年後、東海大学農学部へ進学・卒業。都内私立学校で非常勤講師として2年間勤務したのち、羽田国際中学・高等学校に着任。着任2年目から校内で養蜂を開始し、生物・環境分野を中心に自然と向き合う体験を通して、科学的思考力と表現力の両立をめざしている。

羽田国際高等学校HP(https://www.kanno.ac.jp/haneda/

屋上の巣箱から始まった「純粋な探究」──養蜂が学びの扉を開く

プロジェクトの始まりについて、平賀先生はこう振り返ります。

平賀先生:最初は本当に、ぬるっと始まりました。

校内研修で、学校を活性化するための活動について考える機会があり、前の学校で見たことがあった「養蜂」をやってみたいと、軽い気持ちで言ってみたんです。

すると、校長を含めて、周りが「面白いからやってみれば」と言ってくれて、気がついたら、この養蜂プロジェクトがスタートしました。

一つ考えていたことがあるとしたら、理科の活動だと捉えると面白くないな、という視点です。

自分も養蜂なんてやったことがないので、前任校の先生を紹介してもらったり、講演会に行ったりして、情報を集めるところから始めたんですが、

養蜂についての外部研修に行くと、ミツバチに関するアカデミックな内容より、

養蜂を通じた「社会とのつながり」や「地域との連携」がどう生まれたか、どうやってそのつながりを生み出すか、の話が中心なんです。

だから、養蜂自体は理科以外の先生でもできると思っていたし、学校全体を巻き込むためにも、絶対に教科の垣根を越えた方がいいと思っていました。

早速声をかけた先生も、担当は国語科。

本当に知識ゼロで、蜂もちょっと怖かったんです(笑)
でも「手伝ってほしい」と言われて、行ってみたら、見よう見まねでやるうちにどんどん面白くなってきて。

と言っていましたね(笑)

ーーー

こうして誕生した教科横断の探究チーム。

平賀先生は「いま手伝ってくれてるメンバーは、僕は理科ですが、他は国語と数学、英語です。本当は社会科の先生もほしかったんですけど(笑)」と、笑いながら語ってくれました。

実際に巣箱を開けて蜂の世話をする様子

経験を抽象化する力──探究が生徒の未来に効く理由

プロジェクトは、「養蜂」の探究を越えて、ハチミツの採取、商品化、マーケティング、デザイン、販売、コミュニケーションへと広がり、生徒たちは「社会そのもの」に触れていくことになります。

平賀先生:セイヨウミツバチって、気温の変化やダニにも弱いので、適切に手をかけてあげないと簡単に全滅してしまうんです。

そういった面で、命っていう体験価値もあると思いますし、加えて今回は、自分たちで採集したハチミツを文化祭で販売する活動によって、生徒たちと「社会とのつながり」を生むことができたのがよかったと感じています。

自分たちがモノを売る側になる経験って、あんまりないと思うんですよね。

実際にそういったことを経験させられたのは、すごく強い。

自分たちで遠心分離機を使って採蜜をして、それを自分たちで瓶詰めして、ラベル貼りも販売も自分たち。

販売にかかるお金の集計まで、生徒たちにやってもらいました。

ラベルをどう貼ったらいいかとか、ラベルで何を伝えたらいいのか、どうやったら売れるのかとかも誰もわからない状況で、とにかく全部手探り。

バイトの経験がある子たちも少ないので、接客一つとっても試行錯誤の連続でした。

でも結果的に、文化祭では、140瓶が30〜40分で完売しまして。

これは、僕にとっても想像以上の結果でしたね。

学校側も、例えば値段的なところも、もう少し上げても良かったねとか、あれだけすぐ売れるなら、生徒への販売は数を限定して、外部の方だけに売ってもよさそうだよねとか、

来年に向けた前向きなフィードバックももらえていて、とてもポジティブに捉えてもらえてると思います。

生徒が採蜜、瓶詰めしたハチミツ。ラベルデザインも生徒が担当

平賀先生は、このプロジェクトは、“養蜂そのもの”が目的ではない、と言います。

平賀先生:セイヨウミツバチの飼育から販売にかけて、これが直接的に生徒たちの未来に役立つかって言われたら、そんなことはないと思います。

ですが、そこで学んだこと、具体的なことをさらに抽象化して、他のことにつなげるっていうのが大事だと思うんですね。

例えば「販売」一つとっても、ハチミツの販売っていう具体的なことではなくて、「ものを売る=販売」という抽象的なことに置き換えたら、色んなところに役に立っていくはずです。

生徒の将来の興味は誰にもわからないし、それがどう役に立つかわからない。

だからこそ、色んなものを体験しておいたほうがいい。

こういったプロジェクトでもいいですし、部活でもいいんですが、とにかくカリキュラムに縛られない幅広い、多様な経験は、生徒たちのこれからの武器になると思いますし、大学受験、ひいては人生経験として、面白くなっていくと思います。

だから、このプロジェクトの目的は「養蜂そのもの」ではなく、プロジェクトや探究活動を通じて、色々な経験をすること。

その経験を抽象化し、応用できる力を育むことに重きをおいているんです。

先生が越境すれば、生徒も社会にひらかれる──学校の懐の深さがつくる越境の場

このプロジェクトが成立し、他教科の先生も巻き込み、越境が連鎖していった背景には、「面白いからやってみたら?」が実現する学校風土があるといいます。

平賀先生:繰り返しになりますが「養蜂をやってみたい」が実現したのは、校長先生がやってみたら?と言ってくれたからです。

本校が面白いと思うのは、外部の養蜂に関連した講演会の参加費用を学校がバックアップしてくれるところ。

講演会に参加する時間を勤務時間として扱ってもらえたこともあります。

やってもいいよ、というだけではなく、本当に背中を押して応援してくれたのはありがたいですし、本校ならではの風土だなと感じます。

また、プロジェクトに関わってくれた他の先生からは、

このプロジェクトに関わったおかげで、大人になってからも、自分の殻を破ってチャレンジしたい気持ちに気づけた、その気持ちに気づかせてくれたっていう意味でも、すごく良い体験だったように感じます。

というコメントもありました。

自分たちが挑戦していれば、生徒たちにもそういう姿勢を、説得力を持って伝えていけるように思います。

先生が越境すれば、生徒も社会にひらかれる──学校の懐の深さがつくる越境の場

平賀先生の探究プロジェクトの事例は、

・越境の実現において、学校の風土や越境を後押しする環境の影響も大きい
・必ずしも越境に積極的でなくても、自然に越境学習は実現できる
・これらによって得られる学びは、生徒のたちにも還元されていく

など、示唆に富む内容でした。

法政大学大学院の石山恒貴教授による「越境学習」の研究によると、越境学習を推進するためには、「個人の熱意」だけでなく「組織の受容」「余白の許容」も重要であるとされています。

羽田国際高校のチャレンジを受容し、背中を押す姿勢が、生徒たちにとっても多様で豊かな学びにつながっていると言えるのではないでしょうか。

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「学校の外の経験が、教育に還元される」

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